すっかり寒くなり、キノコも少ないです。

ビョウタケの詳細な同定

子嚢菌、中でも小さな盤菌がこれから春にかけて出てくる季節です。

フィールドにて





無いのです。写真が・・・


情報館に戻って

左から、クロロスプレニウム・クロラ、同左、キチャホウライタケ、同左
       

左から、ナヨタケの仲間、コガネニカワタケ、アナタケ、同定台の様子
       

※ コガネニカワタケは黄色く、乾燥すると赤いですが、シロキクラゲ属なのです。
ビョウタケ
     

顕微鏡観察

今回はビョウタケを詳細に見てみましょう。
まずは、子実体をシゲシゲと。
表は濃い黄色〜レモン色、裏は白っぽく裏返すと円錐状です。白い部分は円盤の縁までは届かず、従って裏から見ると縁が黄色くなっているように見えます。
個体を木から取りはずして見ないとわからない特徴ですね。
     

顕微鏡写真で最小メモリは3.18~3.19μm(周囲へ行くほど伸びる)ですので、子嚢の長さは43〜44目盛、すなわち137〜140μm。子嚢の太さは2〜3目盛、すなわち6.4〜9.6μm。
   

胞子の長さは4〜4.5目盛なので、12.7〜14.3μm。胞子の太さは1.2〜1.3目盛なので、3.8〜4.1μm。
   

側糸と呼ばれる、子嚢の隙間に生えている菌糸の太さは先が太く膨らんで1〜1.2目盛なので、3.2〜3.3μm。
といったところでしょうか。また、黒い小粒子が散布されているようです。
   

あと、メルツァー試薬で染めると、子嚢の先端が青く変色するので、アミロイド+です。
 

胞子をよく見ると、中央で2分割されているようです。ピントの合わせ方によって見えなくなるので注意深く見ないといけないですね。
   

これらの特徴をスイス図鑑Vol1(子嚢菌編)と照合すると胞子や子嚢の大きさはやや大きめであるものの、胞子の2分された形や側糸の先太の形、粒子が付いた特徴などいずれもBisporella citrina(ビョウタケ)に付合します。これは典型的なビョウタケのようです。私は全体が黄色いのがビョウタケと誤解していましたが、裏面は白いのが特徴と言えそうです。
北陸図鑑にも掲載されていますが検鏡図と解説には側糸や胞子の特徴が省かれていますので判断に迷いそうです。
「ビョウタケは高山系で低地で見られるのはニセキンカクアカビョウタケ」という記述も散見されますがあいなは冷涼なためかビョウタケも見られます。低地でも見られると思われます。
(参考)
裏面はいずれも淡色〜白色。逆円錐形。
ビョウタケモエギビョウタケニセキンカクアカビョウタケ
胞子は長円形 胞子は楕円形 胞子は両端の尖った紡錘形
高山系と言われる 高山系 低地で見られる
レモン色のち濃い黄色〜橙色 硫黄色〜のち橙色 黄色〜橙色のち帯赤橙色〜朱色

採取、観察されたキノコのリスト


キチャホウラタケ Xeromphalina cauticinalis ハラタケ目_ガマノホタケ科_ヒメカバイロタケ属
コガネニカワタケ Tremella mesenterica シロキクラゲ目_シロキクラゲ科_シロキクラゲ属
ナヨタケ属の一種 Psathyrella sp. ハラタケ目_ナヨタケ科_ナヨタケ属
ビョウタケ Bisporella citrina ビョウタケ目_ビョウタケ科_ビョウタケ属
クロロスプレニウム・クロラ Chlorosplenium chlora ビョウタケ目_ハイイロチャワンタケ科_クロロスプレニウム属
アナタケ Hyphodontia flavipora タバコウロコタケ目_アナタケ科_ウスカワタケ属