秋のキノコに染まるにはまだ早そうです

そう言いつつもいつもは10月に出るオオワライタケが発生したとのこと


フィールドにて

よくわからないベニタケ、チチタケには悩まされますね。特に、灰色や薄色のベニタケ類は日本の図鑑に少ないです。


左からさっそく、ベニタケの一種、写真撮影のようす
   

左から、ガンタケ、同左、ツエタケの一種、同左
       

左から、ヒトヨタケの一種、クサウラベニタケ、同左、フクロツルタケ
       

左から、ベニナギナタタケ、アラゲコベニチャワンタケ属の一種、タマツノホコリ?、ツリフネソウ
       



里山情報館に戻って

同定台のキノコ
左から、ウスヒラタケ、ティラミステングタケ、ホウロクタケ、ハナウロコタケ
       

左から、アラゲコベニチャワンタケ属の一、ニセアシベニイグチ、イロガワリベニタケ、ヌメリツバタケモドキ
ヌメリツバタケはヌメリツバタケモドキと交配でき同種であるとされ、ヌメリツバタケモドキの方に統一された。なお、従来のヌメリツバタケに用いていたMucidula mucidaという学名のキノコは、分子解析により別種のものとわかった。
       

左から、ベニタケ属の一種、同左、クロツブヌメリイグチ、同左
傘表面がクリーム色だが退色していくにつれヒダはクリーム色になっていく。チチタケ属のようでもあり傷つけたが乳が認められなかった。
       

左から、コブアセタケ?、不明種、キツネタケ、ベニナギナタタケ
カブラアセタケはもう少し大きく、茶色が濃く光沢が感じられると記憶している。
       

左から、ナギナタタケ、チチタケ、ノウタケ、ヒトヨタケ?
       

左から、アカイボカサタケ、フウセンタケ属の一種1、フウセンタケ属の一種2、テングツルタケ
ナツノカワムラフウセンタケは紫味が強く、柄が細く、肉に変色生がないが発生時期は梅雨ごろと言われている。
       

左から、ツチナメコ、カレエダタケモドキ、ツエタケ属の一種、クヌギタケ?
ツエタケが何本か採れたが、柄の鱗片模様や傘のシワ模様など変化が大きい。しかし並べてみると共通するところがあり同じ種に見える。
       

左から、シロクロハツ、同左、ガンタケ、同左
クロハツだが、初見が白いので白クロハツという名前になっています。老生したり、傷つくと黒くなりますが、白い部分が残っているとシロクロハツとわかります。
       

左から、クサウラベニタケ、カバイロツルタケ、同左、アケボノドクツルタケ
アケボノドクツルタケはKOHで変色します。変色しないものはニオイドクツルタケ。本家のドクツルタケは変色します。
       

左から、フクロツルタケ、同左、チチタケ属の一種1、ニオイコベニタケ
このチチタケ属の一種は初めて。図鑑に載っていそうながらまだ同定できていない。
       

左から、キイロイグチ、キヒダマツシメジ、チチタケ属の一種2
     

同定台の様子
   

小さいベニチャワンタケの検鏡

裏に短い荒毛が生えていますが、上から見るとまつ毛が無い!ように見えます
濡れた腐朽材に発生していました。
子実体の断面写真
   
これまでに採った個体に比べるとまつげ(荒毛)が少ないというか短いです。

薄く切った切片を左40倍、右100倍で見たところ。太い橙褐色の根のような細胞が荒毛です。長さ150〜400μm。
   

荒毛を拡大400倍で見たもの、節がありますね。左から中央部、先端部、基部。基部はあまり枝分かれがない。
     

胞子の入った子嚢という細長い袋が、ぎっしり並んでいる部分を(子実層といいます)見たもの。左から100倍、400倍、同左。一番右は100倍で、バラけた部分を見ていますが、子嚢が浮いています。胞子のすっかり出てしまったものも。
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なお、子嚢の間に先が膨らんだ細い棒のような細胞が並んでいて、ところどころ橙色をしていますが、これは側糸といいます。小さい茶碗が橙色に見えるのはこの色なのですね。

さらに拡大して1つ1つの胞子や側糸を見たものです。左の3つは1000倍で最小目盛りが1.25μm、右のは400倍で最小目盛りが3.18μmです。ちなみにコロナウイルスは左の1000倍の最小目盛りの10分の1の大きさだそうです。
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胞子の写真は左が中心にピントが合っている状態。まわりに小さいイボイボが出ていることがわかります。
その右の写真は手前にピントが合っている状態。表面の模様が見える状態ですが、いまいちはっきりした模様がわかりません。でこぼこした感じはします。このイボは染色するとはっきりわかるとのことですが、コットンブルーを使ったもののうまく染まりませんでした。次回再挑戦です。
側糸の写真は黒紫になっていますが、これはメルツァー試薬で橙色の部分が変色したためです。アミロイドの性質を示しています。
子嚢とその中の胞子を右の写真で示していますが、これはメルツァーを使う前の状態。
次はメルツァー試薬を滴下した後の状態。
側糸だけが反応しています。胞子は橙色に染まっており偽アミロイドといえるのでしょうか。熟し方が足りない胞子は染まり方が弱いです。子嚢の先端が青く変色するきのこも多いですが、この種は変色しませんでした。
   


胞子の大きさ、荒毛の長さなどを測って手元の図鑑と比べてみたところ、以前に同定した Scutellinia kerguelensis という種が最も近いと考えます。胞子の大きさ約20μm x 12μm、楕円で細かいイボが多数あり、内容物は核がうっすら見えつつ粒状のものに満たされており、荒毛の長さも200〜400μmで基部が枝分かれ少ないこと、子嚢にメルツァー反応がなく、分節化して先の膨大した側糸があるなどで判断しています。

採取、観察されたキノコのリスト

1 アカイボカサタケ / イッポンシメジ属 / イッポンシメジ科
2 アケボノドクツルタケ / テングタケ属 / テングタケ科
3 アラゲコベニチャワンタケの一種(Scutellinia kerguelensis) / チャワンタケ属 / ピロネマキン科
4 イロガワリベニタケ / ベニタケ属 / ベニタケ科
5 ウスヒラタケ / ヒラタケ属 / ヒラタケ科
6 カバイロツルタケ / テングタケ属 / テングタケ科
7 カレエダタケモドキ / カレエダタケ属 / カレエダタケ科
8 ガンタケ / テングタケ属 / テングタケ科
9 キイロイグチ / イグチ属 / イグチ科
10 キツネタケ / キツネタケ属 / ヒドナンギウム科
11 キヒダタケ / キヒダタケ属 / イグチ科
12 キヒダマツシメジ / キシメジ属 / キシメジ科
13 クサウラベニタケ / イッポンシメジ属 / イッポンシメジ科
14 クヌギタケ? / クヌギタケ属 / クヌギタケ科
15 クロツブヌメリイグチ / ヌメリイグチ属 / ヌメリイグチ科
16 コブアセタケ? / アセタケ属 / フウセンタケ科
17 シロクロハツ / ベニタケ属 / ベニタケ科
18 チチタケ / チチタケ属 / ベニタケ科
19 チチタケsp1 / チチタケ属 / ベニタケ科
20 チチタケsp2 / チチタケ属 / ベニタケ科
21 ツエタケの一種 / ツエタケ属 / タマバリタケ科
22 ツチナメコ / フミヅキタケ属 / モエギタケ科
23 ティラミステングタケ / テングタケ属 / テングタケ科
24 テングツルタケ / テングタケ属 / テングタケ科
25 ナギナタタケ / ナギナタタケ属 / シロソウメンタケ科
26 ニオイコベニタケ / ベニタケ属 / ベニタケ科
27 ニセアシベニイグチ / ヤマドリタケ属 / イグチ科
28 ヌメリツバタケモドキ / ヌメリツバタケ属 / タマバリタケ科
29 ノウタケ / ノウタケ属 / ハラタケ科
30 ハナウロコタケ / ハナウロコタケ属 / シワタケ科
31 ヒトヨタケ? / ヒトヨタケ属 / ナヨタケ科
32 フウセンタケsp1 / フウセンタケ属 / フウセンタケ科
33 フウセンタケsp2 / フウセンタケ属 / フウセンタケ科
34 フクロツルタケ / テングタケ属 / テングタケ科
35 不明種 / /
36 ベニタケsp1 / ベニタケ属 / ベニタケ科
37 ベニタケsp2 / ベニタケ属 / ベニタケ科
38 ベニナギナタタケ / ナギナタタケ属 / シロソウメンタケ科
39 ホウロクタケ / ホウロクタケ属 / ツガサルノコシカケ科

同定 伊藤、中嶋、山本
写真 中嶋