兵庫きのこ研究会

修法ヶ原定点観察会(2009.10.18)

 

 

「フウセンタケは難しい(>_<)」

 

 9月の旱魃のせいで今年の秋のきのこの発生状況はここ数年の中でも最悪です。きのこ狩りに出かけた当会の食菌ハンター達から「きのこがまったくない」という声がちらほらと聞こえます。そんな中迎えた10月の定点観察会です。

 私は恒例のごとく大竜寺コースに出かけましたが、案の定まったくきのこはありません。きのこがなければ歩くのははやいものでいつもより30分もはやい帰還となりました。

 昼食後、同定台に並べられたきのこをいつものように整理していましたが、どうにもこうにもやつらのせいでうまく整理できません。やつらとはフウセンタケの仲間たちです。このフウセンタケというきのこは幼菌と成菌では傘や柄、ヒダの色まったくと言っていいほど違う色のきのことなります。また、乾燥すると色が抜けたりすることもしばしば。

「こっちといっしょか?いやこっちか?」となかなかまとまりません。とりあえず、「えいやー」とまとめて、8種類ぐらいフウセンタケspとして同定しました。・・・なんか気になったので、すべて持ち帰って再度検討してみました。

 細かい部分の観察や胞子の観察など検討してみると、いっしょとしたものが、違ったり、違うと思ったものがいっしょだったりと愕然としました。さらにはフウセンタケspとして持ち帰ったものが、キシメジ科のキノコだったりと、今回の同定は散々なものでした。

 きのこ狩りのシーズンはフウセンタケとの格闘のシーズンでもあります。どうすればフウセンタケを見分けられることができるのでしょうか?「フウセンタケは難しい」とつくづく実感した10月の定点観察会でした。

ちなみにフウセンタケspには1つも名前がつけられませんでしたのであしからず。

 

高くて取れないアイカワタケ(ヒラフスベ)を撮る

 

傷をつけると血が出るチシオタケ

 

いつもの集合場所にて

10月にしては寂しい同定台@

10月にしては寂しい同定台A

 

同定中ですが、悩ましい

 

本日は女性陣のほうが多かったようです。

フウセンタケは難しいと力説する会員

 

難しいという解説に難しそうにする会員たち

 

 

 

 

20091018

 修法ヶ原観察記録

天候:晴れ 
参加者:21
同定:63

 

和名

属名

科名

1

マツオウジ

マツオウジ属

ヒラタケ科

2

ウスヒラタケ

ヒラタケ属

ヒラタケ科

3

ウラムラサキ

キツネタケ属

キシメジ科

4

キツネタケ近縁種

キツネタケ属

キシメジ科

5

オオキツネタケ?

キツネタケ属

キシメジ科

6

ハタケシメジ

シメジ属

キシメジ科

7

シロゲカヤタケ(長沢)

カヤタケ属

キシメジ科

8

ムラサキシメジ

ムラサキシメジ属

キシメジ科

9

ムラサキシメジ属の一種

ムラサキシメジ属

キシメジ科

10

ワサビカレバタケ

モリノカレバタケ属

キシメジ科

11

ヒメカバイロタケ

ヒメカバイロタケ属

キシメジ科

12

チシオタケ

クヌギタケ属

キシメジ科

13

サクラタケ

クヌギタケ属

キシメジ科

14

シイタケ

シイタケ属

キシメジ科

15

コタマゴテングタケ

テングタケ属

テングタケ科

16

アケボノドクツルタケ

テングタケ属

テングタケ科

17

イボテングタケ

テングタケ属

テングタケ科

18

ウラベニガサ

ウラベニガサ属

ウラベニガサ科

19

カラカサタケ

カラカサタケ属

ハラタケ科

20

ナカグロモリノカサ

ハラタケ属

ハラタケ科

21

ヒトヨタケ

ヒトヨタケ属

ヒトヨタケ科

22

ムジナタケ

ムジナタケ属

ヒトヨタケ科

23

ニガクリタケ

クリタケ属

モエギタケ科

24

センボンイチメガサ

センボンイチメガサ属

モエギタケ科

25

アシナガヌメリ

ワカフサタケ属

フウセンタケ科

26

ヒメワカフサタケ

ワカフサタケ属

フウセンタケ科

27

ザラツキキトマヤタケ?

アセタケ属

フウセンタケ科

28

シロトマヤタケ?

アセタケ属

フウセンタケ科

29

アセタケ属の一種

アセタケ属

フウセンタケ科

30

ウスフジフウセンタケ

フウセンタケ属

フウセンタケ科

31

イロガワリフウセンタケ

フウセンタケ属

フウセンタケ科

32

ササタケ

フウセンタケ属

フウセンタケ科

33

フウセンタケ属の一種1

フウセンタケ属

フウセンタケ科

34

フウセンタケ属の一種2

フウセンタケ属

フウセンタケ科

35

フウセンタケ属の一種3

フウセンタケ属

フウセンタケ科

36

フウセンタケ属の一種4

フウセンタケ属

フウセンタケ科

37

フウセンタケ属の一種5

フウセンタケ属

フウセンタケ科

38

フウセンタケ属の一種6

フウセンタケ属

フウセンタケ科

39

チャツムタケ

チャツムタケ属

フウセンタケ科

40

クサウラベニタケ

イッポンシメジ属

イッポンシメジ科

41

イッポンシメジ属の一種

イッポンシメジ属

イッポンシメジ科

42

オウギタケ

オウギタケ属

オウギタケ科

43

アミタケ

ヌメリイグチ属

イグチ科

44

チチアワタケ

ヌメリイグチ属

イグチ科

45

ヌメリイグチ

ヌメリイグチ属

イグチ科

46

コショウイグチ

コショウイグチ属

イグチ科

47

アイバシロハツ

ベニタケ属

ベニタケ科

48

チシオハツ近縁種

ベニタケ属

ベニタケ科

49

ドクベニタケ近縁種

ベニタケ属

ベニタケ科

50

ウコンハツ近縁種

ベニタケ属

ベニタケ科

51

ウズハツ近縁種

チチタケ属

ベニタケ科

52

キチチタケ

チチタケ属

ベニタケ科

53

ハツタケ

チチタケ属

ベニタケ科

54

チョウジチチタケ

チチタケ属

ベニタケ科

55

フサヒメホウキタケ

フサヒメホウキタケ属

フサヒメホウキタケ科

56

アイカワタケ

マスタケ属

サルノコシカケ科

57

カイガラタケ

カイガラタケ属

サルノコシカケ科

58

ハチノスタケ

タマチョレイタケ属

サルノコシカケ科

59

ヒイロタケ

シュタケ属

サルノコシカケ科

60

カワラタケ

シロアミタケ属

サルノコシカケ科

61

コフキサルノコシカケ

マンネンタケ属

マンネンタケ科

62

ホコリタケ

ホコリタケ属

ホコリタケ科

63

ツチグリ

ツチグリ属

ツチグリ科

 

 

 

 

7 シロゲカヤタケ(長沢) Clitocybe sp.
 白いカヤタケ型のキノコで、傘の縁部に明瞭な毛があることが特徴。神戸付近では秋ごろに普通に見られる。
 2001年の定点観察会においてオシロイシメジと同定したキノコはおそらく本種であると思われる。
 シロゲカヤタケは菌じん研究所の長沢栄史先生の命名である。まだ、正式には報告されていない。
 日本きのこ図版においてシロケシメジモドキとされているキノコとは同一種。

9 ムラサキシメジ属の一種 Lepista sp.                             同定/幸徳
 現地ではフウセンタケspとしたキノコである。胞子を観察したところ、その胞子は白色で表面にイボが観察された結果からムラサキシメジ属のキノコと思われる。ムラサキシメジとは色が薄い点と柄の表面がコムラサキシメジのような繊維状である点で異なる。

16 アケボノドクツルタケ Amanita subjunquillea var. alba Zhu L. Yang          同定/幸徳
 
現地ではドクツルタケと同定していたキノコ。柄にささくれがないこと、傘の表面の中心付近が黄色〜帯紅黄色であることからドクツルタケとは異なる。胞子が球形であること、KOHで黄変することからアケボノドクツルタケ(日本きのこ図版 No.980)とは同一種であると思われ、また、アケボノドクツルタケは「楊祝良&土居祥兌. 1999. 国立科学博物館研究報告 Ser. B, 25(3):126-127」で記載された"Amanita subjunquillea var. alba Zhu L. Yang" とは同一種ではないかと指摘されている。アケボノドクツルタケは傘の中心付近が紅色を帯びるが、Amanita subjunquillea var. albaは傘の中心が黄色を帯びるとされている点でやや異なるが、修法ヶ原では黄色を帯びたものからやや赤みを帯びたものまで観察されている点から個体変異ではないかと思われる。それ以外の点はこの両者の特徴とよく一致していることから上記のように同定した。

33 フウセンタケ属の一種1 Cortinarius sp.                       同定/幸徳
 傘に吸水性がなく、胞子が楕円形〜紡錘形であることからウスフジフウセンタケ節のキノコと思われる。小〜中型で傘は淡茶色で、柄は白色と淡茶色が混じる。

34 フウセンタケ属の一種2 Cortinarius sp.                       同定/幸徳
 
傘に吸水性がなく、胞子が楕円形〜紡錘形であることからウスフジフウセンタケ節のキノコと思われる。33とは非常によく似ているが、本種は傘やヒダ、肉などがややこげ茶色である。

35 フウセンタケ属の一種3 Cortinarius sp.                       同定/幸徳
 傘に吸水性がなく、胞子が球形〜類球形であることからマルミノフウセンタケ節のキノコと思われる。小型で、傘は暗青色〜暗紫色、柄は白色と傘と同様の色が混じり、下部に向かって茶色を帯びる。

36 フウセンタケ属の一種4 Cortinarius sp.                       同定/幸徳
 傘に吸水性がなく、胞子が楕円形〜紡錘形であることからウスフジフウセンタケ節のキノコと思われる。小〜中型、傘は茶色〜焦茶色でややささくれ、柄は上部で紫色、下部に向かって茶色を帯び、ツバの痕跡がややだんだら様を残す。

37 フウセンタケ属の一種5 Cortinarius sp.                       同定/幸徳
 傘に吸水性がなく、胞子が球形〜類球形、やや赤変色する特徴からアカツブフウセンタケ節のキノコではないかと思われる。柄の基部の肉が黄色いことが大きな特徴。

38 フウセンタケ属の一種6 Cortinarius sp.                       同定/幸徳
 ヒダがの幅がかなり大きいのが特徴。全体が茶色である。

50 ウコンハツ近縁種 Russula aff. flavida Frost
 ウコンハツに比べて黄色味が少ないので近縁種に留めた。

52 ウズハツ近縁種 Lactarius aff. violascens (J. Otto) Fr.
 柄が帯黄色で乳液が紫色に変色する特徴からウズハツに極めて近いが、傘表面の色が茶色いことからウズハツとはやや異なる。

56 アイカワタケ Laetiporus sulphureus var. sulphureusauct. jap
 従来ヒラフスベと同定されていたキノコであるが、最近の研究で、ヒラフスベはアイカワタケのアナモルフであるされている(Ota, Y. & Hattori, T. 2008. Mycoscience 49(3):168-177)。定点観察会において、今までに採取されていたのはヒラフスベであり、胞子を形成するアイカワタケはまだ採取されていない。

 

 

7 シロゲカヤタケ(長沢)

9 ムラサキシメジ属の一種

 

16 アケボノドクツルタケ

 

16 アケボノドクツルタケ KOHで黄変

16 アケボノドクツルタケの胞子

 

33 フウセンタケ属の一種1

34 フウセンタケ属の一種2

 

35 フウセンタケ属の一種3

36 フウセンタケ属の一種4

 

36 フウセンタケ属の一種4

 

37 フウセンタケ属の一種5

 

 

37 フウセンタケ属の一種5の胞子

 

38 フウセンタケ属の一種6

 

 

38 フウセンタケ属の一種6

 

52 ウズハツ近縁種

 

56 アイカワタケ



文 買うとく

写真 アルパチーノ、買うとく

作成 買うとく