兵庫きのこ研究会 修法ヶ原定点観察会(2015.4.19)

終始曇り空でしたが、 大きく天気が崩れることはなくなによりでした。
普段はあまり注目されないヒトクチタケも、 4月は美しく、目を引いていました。
雨に濡れた花もキノコも風情ですね!

春到来

アミガサタケに長蛇の列

美しい4月のヒトクチタケ

緑とのコントラストが美しい

頼もしい新入部員さん

今回の収穫

解説中

2015年4月19日 観察記録

天候:雨 参加者:35+13人
和名 属名(新分類/旧分類) 科名(新分類/旧分類)
1 マツオウジ マツオウジ属 キカイガラタケ科/ヒラタケ科
2 アマタケ モリノカレバタケ属 ツキヨタケ科/キシメジ科
3 シイタケ シイタケ属 ツキヨタケ科/キシメジ科
4 カエンオチバタケ? ホウライタケ属 ホウライタケ科/キシメジ科
5 ホウライタケ属の一種 ホウライタケ属 ホウライタケ科/キシメジ科
6 ワサビタケ ワサビタケ属 クヌギタケ科/キシメジ科
7 アクニオイタケ クヌギタケ属 クヌギタケ科/キシメジ科
8 チシオタケ クヌギタケ属 クヌギタケ科/キシメジ科
9 エヌメリタケ? クヌギタケ属 クヌギタケ科/キシメジ科
10 キチャホウライタケ ヒメカバイロタケ属 クヌギタケ科/キシメジ科
11 ヒメカバイロタケモドキ? ヒメカバイロタケ属 クヌギタケ科/キシメジ科
12 ウラベニガサ ウラベニガサ属 ウラベニガサ科
13 ニガクリタケ ニガクリタケ属 モエギタケ科
14 フウセンタケ属の一種 フウセンタケ属 フウセンタケ科
15 ミイノモミウラモドキ イッポンシメジ属 イッポンシメジ科
16 ヌルデタケ ヌルデタケ属 カンゾウタケ科/タコウキン科
17 カラムラサキハツ ベニタケ属 ベニタケ科
18 ケシワウロコタケ ケシワウロコタケ属 コウヤクタケ科
19 アミスギタケ タマチョレイタケ属 タマチョレイタケ科
20 ヒトクチタケ ヒトクチタケ属 タマチョレイタケ科
21 ヒイロタケ シュタケ属 タマチョレイタケ科
22 チリメンタケ シロアミタケ属 タマチョレイタケ科/タコウキン科
23 シハイタケ シハイタケ属 ?科/タマチョレイタケ科
24 ハカワラタケ シハイタケ属 ?科/タマチョレイタケ科
25 ホウロクタケ ホウロクタケ属 ツガサルノコシカケ科/サルノコシカケ科
26 ニッケイタケ オツネンタケ属 タバコウロコタケ科
27 ツチグリ ツチグリ属 ディプロシスティス科/ツチグリ科
28 コツチグリ ツチグリ属 ディプロシスティス科/ツチグリ科
29 ホコリタケ ホコリタケ属 ハラタケ科/ホコリタケ科
30 キイロニカワタケ シロキクラゲ属 シロキクラゲ科
31 アラゲキクラゲ キクラゲ属 キクラゲ科
32 キクラゲ属の一種 キクラゲ属 キクラゲ科
33 オロシタケ オロシタケ属 ヒメキクラゲ科
34 アカキクラゲ属の一種 アカキクラゲ属 アカキクラゲ科
35 マツカサチャワンタケ キボリアキンカクキン属 キンカクキン科
36 ツバキキンカクチャワンタケ ニセキンカクキン属 キンカクキン科
37 Arachnopeziza aurata クモノスヒナノチャワンタケ属 クモノスヒナノチャワンタケ科/ヒナノチャワンタケ科
38 シロヒナノチャワンタケ属の一種 ヒナノチャワンタケ属 ?科/ヒナノチャワンタケ科
39 フクロシトネタケ フクロシトネタケ属 フクロシトネタケ科/ノボリリュウタケ科
40 アミガサタケ アミガサタケ属 アミガサタケ科
41 トガリアミガサタケ アミガサタケ属 アミガサタケ科
42 キチャワンタケ(モミ林タイプ) キチャワンタケ属 キチャワンタケ科/ピロネマキン科
43 クロコブタケ クロコブタケ属/ヒポキシロン属 クロサイワイタケ科
トリコデルマキン属の一種 トリコデルマキン属 ニクザキン科
セペドニウム属の一種 セペドニウム属 ヒポミケスキン科
ヒポデルマ属の一種 ヒポデルマ属 リティズマ科

9 エヌメリタケ? Mycena cf. clavicularis (Fr.) Gillet

同定:高橋春樹 文:和田(匠)
 定点観察会初記録。現地ではヌナワタケ?と同定されたきのこ。柄に強い粘性を持つ点など、ヌナワタケに極めて類似するが、傘は灰褐色を呈す事、ヒダが垂生する事、傘表皮組織はクヌギタケ型(横に這うように配列している)などの点から、エヌメリタケと考えられる。しかしエヌメリタケそのものではない可能性もあり、高橋春樹氏により疑問符が付けられた。なお、ヌナワタケの傘表皮組織は柵状構造で、エヌメリタケとは属レベルで異なる。<高橋春樹私信>

11 ヒメカバイロタケモドキ? Xeromphalina cf. curtipes Hongo

 同定:高橋春樹 文:和田(匠)
 定点観察会初記録。現地では旧キシメジ科の一種と同定されたきのこ。全体に黄褐色を帯びる事、ヒダが垂生する事、柄が偏在性で根元に発達した黄色の毛状菌糸体が存在する点などから、ヒメカバイロタケモドキと肉眼的には一致する。しかし、厚壁のシスチジアが存在し、シスチジアの形状がやや異なる点など、顕微鏡的特徴に疑問があるため、高橋春樹氏により疑問符が付けられた。<高橋春樹私信>

37 Arachnopeziza aurata Fuckel

同定/大前
 定点観察会初記録。倒木下面に形成されたクモの巣状の菌糸マットから子嚢果を発達させていた。 子嚢果は最大径1.2 mmと極めて小型で、白色〜帯黄色、外面は無色の毛で覆われる。本種の子嚢果の色や胞子サイズは基物や太陽光照射の有無などの環境要因によって変異が生じやすいとされる。国内における本種の報告は多くないが、小型で倒木の下面から発生することが多いため、発見するのが難しいだけで、国内に広く分布しているものと推察される。
 クモノスヒナノチャワンタケ属(Arachnopeziza)は基物にクモの巣状の子実体形成菌糸層(true-subiculum)を形成することが大きな特徴であり、外面に毛を有することから、従来、ヒナノチャワンタケ科(Hyaloscyphaceae)に含まれていた。しかし、近年の分子系統解析の結果、ヒナノチャワンタケ科は極めて多系統な科であることが判明し、狭義のヒナノチャワンタケ科に含まれる属をヒアロスキファ属(Hyaloscypha)1属に限定する暫定的処置が取られた。 これに伴い、これまでヒナノチャワンタケ科に所属していた多くの属の科レベルでの分類学的位置づけが定まらない状態となってしまった。
 ところが今年になり、クモノスヒナノチャワンタケ属は分子系統解析によっても単一のグループであることが支持されている点、狭義のヒナノチャワンタケ科とは系統的に異なる点を考慮し、 本属およびその類縁属を、新科クモノスヒナノチャワンタケ科(Arachnopezizaceae Hosoya, J.G. Han & Baral)として独立させる処置がとられている。
<参考文献>
  • Han J.G. et al. 2014. Phylogenetic reassessment of Hyaloscyphaceae sensu lato (Helotiales, Leotiomycetes) based on multigene analyses. Fungal Biology 118: 150-167
  • Baral H.O. 2015. Nomenclatural novelties. Index Fungorum no. 225

※トリコデルマ属の一種? Trichoderma sp.?

 同定/和田(匠) 現地ではトリコデルマ属の一種と同定された菌類。暗緑色のマット状のコロニーを形成する点はトリコデルマ属と一致する。しかし顕微鏡観察を行っていないので、暫定的に疑問符をつけた。なおトリコデルマ属はボタンタケ属の不完全世代である。
<参考文献>
細矢剛・出川洋介・勝本謙著 伊沢正名写真「カビ図鑑 野外で探す微生物の不思議」 2010

エヌメリタケ?

ヒメカバイロタケモドキ?

Arachnopeziza aurata

トリコデルマ属の一種